- この記事の監修者
- 医療法人「建昇会」理事長。歯科医師。愛知学院大学歯学部卒業、日本成人矯正歯科学会会員、日本矯正歯科学会会員、UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校歯科矯正科修了。
乳歯が残っていてもマウスピース矯正はできる?大人の乳歯と矯正治療について解説
2026年09月4日
「大人なのに乳歯がまだ残っていると言われた」
「乳歯があるとマウスピース矯正はできない?」
「矯正するなら乳歯は抜かないといけない?」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一般的には子どもの頃に乳歯から永久歯へと生え変わりますが、大人になっても乳歯が残っているケースはあります。
そして、乳歯が残っているからといって、必ずしもマウスピース矯正ができないわけではありません。
ただし重要なのは、「乳歯があるかどうか」だけではなく、「なぜその乳歯が残っているのか」「その下に永久歯があるのか」「乳歯を今後どうするのか」まで確認したうえで治療計画を立てることです。
今回は、乳歯が残っている方のマウスピース矯正について詳しく解説します。
大人になっても乳歯が残っていることはある?
乳歯は全部で20本あり、一般的には6歳頃から永久歯への生え変わりが始まり、12歳頃までに多くの乳歯が永久歯へと交換されていきます。
しかし、すべての方が同じように生え変わるわけではありません。
永久歯への交換が行われず、大人になっても乳歯が残っていることがあります。このような状態は「乳歯の晩期残存」と呼ばれます。
「乳歯が残っている=異常」というわけではありませんが、なぜ残っているのかを確認することが大切です。
乳歯が残っている主な理由
大人になっても乳歯が残る理由はいくつか考えられます。
代表的なのが、乳歯の下に生えてくるはずの永久歯がもともと存在しない「永久歯の先天性欠如」です。
この場合、乳歯を押し出す永久歯がないため、乳歯がそのまま残ることがあります。
そのほかにも、
・永久歯が骨の中に埋まっている
・永久歯が通常とは異なる方向を向いている
・永久歯が生えるためのスペースが不足している
・乳歯の根が十分に吸収されていない
など、さまざまな原因が考えられます。
見た目だけでは原因を判断できないため、レントゲンなどを使って永久歯の有無や位置を確認することが重要です。
乳歯が残っていてもマウスピース矯正はできる?
結論からいうと、乳歯が残っていてもマウスピース矯正ができるケースはあります。
「乳歯が1本あるからマウスピース矯正はできない」という単純なものではありません。
ただし、永久歯だけで構成された歯並びとは異なり、その乳歯を将来的にどうするのかまで考えて治療計画を立てる必要があります。
たとえば、
「現在の乳歯をできるだけ長く残して使う」
という計画と、
「乳歯を抜いて、そのスペースを矯正治療で閉じる」
という計画では、歯の動かし方が大きく異なります。
また、
「将来的に乳歯を抜いたあと、別の治療を行うためにスペースを確保しておく」
という選択肢が考えられる場合もあります。
つまり重要なのは、今の歯並びをきれいにすることだけではなく、乳歯の将来まで考えて治療することなのです。
乳歯を残したままマウスピース矯正するケース
乳歯が残っているからといって、必ず抜歯するわけではありません。
乳歯の状態が良く、しっかり噛むことができている場合などには、乳歯を残しながらマウスピース矯正を行うことがあります。
特に乳歯の下に永久歯が存在しない場合、現在の乳歯をできるだけ長く活用することを検討するケースがあります。
ただし、乳歯は永久歯と比べて大きさや歯の根の形などが異なります。
今は問題なく使えていたとしても、「この乳歯が一生そのまま使える」とは限りません。
そのため、
「乳歯が現在使えるから、そのまま並べれば終わり」
ではなく、将来的に乳歯を失った場合にどうするのかまで想定しておくことが大切です。
乳歯を抜いてから矯正することもある
乳歯の状態によっては、乳歯を抜いたうえでマウスピース矯正を進めることもあります。
たとえば、
・乳歯が大きくグラグラしている
・虫歯などで長期間残すことが難しい
・乳歯の下に永久歯が存在する
・乳歯が永久歯の萌出を妨げている
・矯正治療上、乳歯を残すメリットが少ない
などの場合です。
ただし、ここで注意していただきたいのが、「乳歯なら抜いてしまっても問題ない」と自己判断しないことです。
乳歯も現在の歯並びの中では一本の歯としてスペースを占めています。
その歯を抜けば、当然そこにはスペースができます。
そのスペースを利用して歯並びを整えるのか、周囲の歯を動かして完全に閉じるのか、将来の治療のために残すのかによって矯正計画は変わります。
そのため、矯正治療を検討している場合は、乳歯を抜く前に一度矯正歯科で相談することをおすすめします。
乳歯の下に永久歯がない場合はどうする?
乳歯が残っている方の治療で特に重要なのが、**「乳歯の下に永久歯がないケース」**です。
永久歯が先天的に存在しない場合、乳歯が抜けたあとに自然と永久歯が生えてくることはありません。
そのため、その場所を将来的にどうするのかまで考える必要があります。
治療方法は一つではありません。
①乳歯をできるだけ長く残す
乳歯の状態が良ければ、すぐに抜かずにできるだけ長く使う方法があります。
②矯正治療でスペースを閉じる
乳歯を抜いたあと、周囲の歯を移動させてスペースを閉じる方法です。
ただし、噛み合わせや上下の歯のバランスなどによっては、単純にスペースを閉じることが適していない場合もあります。
③将来の治療を考えてスペースを確保する
乳歯を失ったあとに補綴治療などを検討する場合には、その治療に必要なスペースを矯正治療で整えておくことがあります。
どの方法が適しているかは、乳歯一本だけを見て決めることはできません。
上下の歯並び、噛み合わせ、顎の状態、永久歯の本数、スペースなどを総合的に判断する必要があります。
乳歯がある人のマウスピース矯正で重要なこと
乳歯が残っている場合、マウスピースを作って歯を並べ始める前の「診断」が非常に重要です。
永久歯が存在するか確認する
まず確認したいのが、乳歯の下に永久歯が存在するかどうかです。
永久歯がある場合には、その歯がどこにあり、どの方向を向いているのかなども確認します。
乳歯の状態を確認する
乳歯の根や周囲の骨、虫歯の有無、揺れなどを確認し、今後どの程度使用できそうかを評価します。
噛み合わせ全体から判断する
乳歯一本だけではなく、上下の歯の噛み合わせやスペース、前歯・奥歯の位置関係なども重要です。
乳歯を抜いたスペースを閉じることで、別の部分の噛み合わせに影響する可能性もあります。
そのため、口の中全体を見た治療計画が必要になります。
乳歯がある場合こそ「歯を並べるだけ」ではない治療計画を
マウスピース矯正というと、「透明なマウスピースを使って歯をきれいに並べる治療」というイメージが強いかもしれません。
しかし、乳歯が残っているケースでは、単純に現在ある歯をきれいに並べれば治療終了とは限りません。
特に考えておきたいのが、
「その乳歯が将来なくなったらどうするのか?」
ということです。
現在の見た目だけを優先して治療すると、将来的に乳歯を失った際、もう一度歯を動かす必要が生じる可能性もあります。
だからこそ、
今ある乳歯をどうするのか
↓
永久歯は存在するのか
↓
乳歯を残すのか・抜くのか
↓
抜いた場合のスペースをどうするのか
↓
将来どのような噛み合わせを目指すのか
というところまで考えたうえで、マウスピース矯正の治療計画を立てることが大切です。
まとめ|乳歯が残っていてもマウスピース矯正できる可能性があります
大人になっても乳歯が残っていることはあり、乳歯があるからといってマウスピース矯正ができないわけではありません。
一方で、乳歯が残っている理由や永久歯の有無によって、治療方針は大きく変わります。
特に重要なのは、
・なぜ乳歯が残っているのか
・乳歯の下に永久歯があるのか
・現在の乳歯を残せる状態なのか
・乳歯を抜いた場合、そのスペースをどうするのか
・将来的にどのような状態を目指すのか
を治療前に確認することです。
「乳歯があるから矯正は無理かも」と諦めたり、「乳歯だから抜いてしまおう」と自己判断したりする必要はありません。
まずはレントゲンなどで歯や顎の状態を確認し、現在の歯並びだけではなく将来まで考えた治療計画について相談してみましょう。
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