- この記事の監修者
- 医療法人「建昇会」理事長。歯科医師。愛知学院大学歯学部卒業、日本成人矯正歯科学会会員、日本矯正歯科学会会員、UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校歯科矯正科修了。
思っている以上に舌を意識しないと歯並びは治らない?マウスピース矯正と舌癖の関係
2026年07月6日
「マウスピースは毎日きちんとつけています」
「ゴムも指示された通り使っています」
「それなのに、なぜ歯が思ったように動かないの?」
マウスピース矯正をしていると、このような疑問を感じることがあるかもしれません。
もちろん、歯が予定通りに動かない原因はひとつではありません。マウスピースの装着時間やフィット状態、歯の動き方の個人差など、さまざまな要因が関係しています。
その中で、意外と見落とされやすいのが**「舌の位置や使い方」**です。
舌で前歯を押す癖がある、舌がいつも低い位置にある、飲み込むときに舌が歯の間から出てしまう……。
こうした癖は本人にとっては「いつものこと」なので、自覚していないケースも少なくありません。
今回は、矯正治療中に知っておきたい「舌癖」と歯並びの関係について解説します。
あなたの舌、今どこにありますか?
まず、今この記事を読んでいる状態で舌がどこにあるか確認してみてください。
何も話していない、食べていない状態です。
「舌先が前歯に触れている」
「舌が下の前歯の内側にある」
「舌が上下の前歯の間に入っている」
という方はいませんか?
舌の安静時の位置は、矯正治療において確認したいポイントのひとつです。
舌先を前歯へ押しつけるのではなく、舌が上あご側に収まり、歯へ余計な力を加えない状態が基本です。
ただし、適切な位置は歯並びや骨格、口腔内の状態によっても異なります。
SNSなどで見かけた方法を自己流で行い、舌で上あごや歯を強く押す必要はありません。
舌の力は歯並びと関係している?
歯は矯正装置から受ける力だけの影響を受けているわけではありません。
口の中では、唇や頬、舌などから日常的に力を受けています。
ここで大切なのが、「強く押さなければ大丈夫」とは限らないということ。
舌癖の問題は、一瞬だけ強い力をかけることよりも、日常的に同じような力が繰り返されたり、長時間好ましくない位置にあったりすることです。
例えば、舌が安静時にも前歯側に位置している場合、前歯へ継続的な力が加わる可能性があります。
「そんな弱い力で歯が動くの?」
と思うかもしれませんが、矯正治療自体も適切な力を継続的に加えることで少しずつ歯を移動させています。
だからこそ、普段の舌の位置や癖についても確認する必要があるのです。
マウスピースをつければ舌癖も治る?
ここは誤解されやすいポイントです。
マウスピースを装着しているからといって、舌癖まで自動的になくなるわけではありません。
マウスピース矯正では、治療計画に沿って歯に力を加え、少しずつ目標とする位置へ移動させていきます。
しかし、マウスピースを外したときに毎回舌で前歯を押していたり、普段から好ましくない舌の位置が続いていたりすれば、治療を考えるうえで無視できない要素になる場合があります。
特に、
・前歯が噛み合わない「開咬」がある
・前歯が前方へ出ている
・前歯に隙間がある
・舌が前歯の間から出る
・飲み込むときに舌で前歯を押してしまう
といった方は、歯並びだけでなく舌の使い方についても確認することがあります。
「気をつけています」だけでは足りないことも
クリニックで舌について説明されたとき、
「ちゃんと意識しています!」
という方もいるでしょう。
では、1日のうちどのくらい意識できていますか?
食事をするときだけ?
クリニックで言われた直後だけ?
思い出したときだけ?
舌癖の難しいところは、無意識に行っている時間が非常に長いことです。
仕事をしているとき。
スマートフォンを見ているとき。
テレビを見ているとき。
電車に乗っているとき。
リラックスしているとき。
こうした何気ない時間にも、舌は口の中にあります。
そのため「たまに正しい位置に戻す」というより、まずは普段の自分の舌がどこにあるのかに気づくことが重要です。
飲み込む瞬間だけではなく「普段の位置」も大切
「舌癖」というと、食べ物や唾液を飲み込むときに舌が前へ出ることをイメージする方が多いかもしれません。
もちろん飲み込み方も確認するポイントですが、それだけではありません。
特に意識したいのが、何もしていないときの舌の安静時の位置です。
飲み込む動作は一回あたり短時間ですが、安静時の舌の位置は長時間続きます。
そのため、矯正治療中に舌の癖を指摘されている場合は、「飲み込む瞬間だけ直せばいい」と考えず、日常生活の中で舌がどこにあるのかを確認することが大切です。
舌の位置を自己流で無理に変えるのはNG
ここでひとつ注意があります。
「舌が大切なら、とにかく上あごを強く押せばいい!」
というわけではありません。
SNSなどでは、舌を上あごへ強く押しつけることで歯並びや顔貌が変わるとする情報が紹介されていることがあります。
しかし、舌の位置を変えるだけで矯正治療の代わりになるわけではありません。
むしろ、自己流で歯や顎へ不適切な力をかけ続ければ、噛み合わせなどへ悪影響を与える可能性があります。
舌の位置や使い方に問題がある場合には、歯科医師・矯正歯科医などの指導のもとで改善していくことが重要です。
歯並びがきれいになったあとも舌癖は重要
舌について考えてほしいのは、矯正治療中だけではありません。
矯正治療によって歯をきれいに並べたあとには、その状態を維持する「保定」が必要です。
歯には治療終了後も移動する可能性があるため、指示された通りリテーナーを使用することが非常に重要です。
そして、治療前から歯並びへ影響するような口腔習癖がある場合には、その習癖についても確認する必要があります。
せっかく時間をかけて歯を並べたのであれば、
「歯を動かすこと」だけでなく「きれいになった歯並びを安定させること」
まで考えていきましょう。
まとめ|矯正中はマウスピースだけでなく「舌」にも目を向けよう
マウスピース矯正で大切なのは、決められた装着時間を守り、交換スケジュールやゴムの使用など、クリニックからの指示を守ることです。
しかし、それだけではなく、患者さん自身の舌の位置や口腔習癖について確認することが必要になる場合があります。
特に舌癖は無意識に行っていることが多いため、
「意識しているつもり」
だけでは改善が難しいこともあります。
まずは今、自分の舌がどこにあるのか確認してみてください。
そして、
「舌で前歯を押してしまう」
「舌がいつも下にある」
「飲み込むときに舌が前へ出る」
「マウスピースをきちんと使用しているのに、歯が予定通り動いていない」
といった心当たりがある場合には、自己流でトレーニングするのではなく、一度担当のクリニックへ相談してみましょう。
矯正治療は、装置を使って歯を動かすだけではありません。
毎日何気なく行っている舌の使い方まで意識することが、治療をスムーズに進め、治療後の歯並びを安定させるための大切なポイントになることがあります。
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