
- この記事の監修者
- 医療法人「建昇会」理事長。歯科医師。愛知学院大学歯学部卒業、日本成人矯正歯科学会会員、日本矯正歯科学会会員、UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校歯科矯正科修了。
歯列矯正したのに戻ってきた…?舌癖による「後戻り」
2025年05月20日
【体験&解説】矯正したのに歯並びが戻る?舌癖が引き起こす後戻りの正体とは
「せっかく矯正したのに、歯並びがまたズレてきた…」
そんな経験はありませんか?
矯正後に歯並びが崩れてしまう“後戻り”の原因として、**「舌癖(ぜつへき)」**という見えない習慣が関係していることをご存じでしょうか。
今回は、舌癖とは何か?なぜ歯並びが後戻りしてしまうのか?そして、どうすれば防げるのか?をわかりやすくまとめました。
矯正中・矯正後の方はもちろん、これから矯正を考えている方も必見です。
◆ 後戻りってどうして起きるの?
矯正後に歯並びが元に戻ってしまう「後戻り」。
これは以下のような原因に分けられます。
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リテーナー(保定装置)をしっかり使っていない
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加齢や骨格の自然な変化
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舌や口周りの癖(舌癖・口呼吸など)
この中でも、特に見落とされがちなのが**舌癖(ぜつへき)**です。
◆ 舌癖とは?日常に潜む“無意識の圧力”
「舌癖」とは、舌の位置や使い方に関する無意識のクセのこと。
たとえば…
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いつも舌が下に落ちている
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飲み込むときに舌で前歯を押す
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口呼吸が多い
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舌を前に出す癖がある
これらはすべて、歯列に少しずつ力をかける行動です。
1回の力は微弱でも、毎日何百回も繰り返すことで、歯は確実に影響を受けてしまいます。
◆ 舌癖による後戻りのメカニズムとは?
舌癖があると、以下のような流れで後戻りが進行していきます:
そこに舌の力が加わると、せっかく整えた歯列が徐々に崩れてしまうのです。
◆ あなたにもあるかも?舌癖セルフチェック
下記の項目に当てはまるものがあるか、チェックしてみましょう:
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舌の位置が下あごに落ちている
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飲み込み時、舌が前歯に当たる
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口がぽかんと開きがち
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口呼吸が多い
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舌を無意識に前に出してしまう
3つ以上当てはまったら、舌癖がある可能性大です。
◆ 舌癖はどうやって治す?MFTという方法
舌癖を根本から改善するには、**MFT(口腔筋機能療法)**というトレーニングが効果的です。
歯科医院や専門機関で行うもので、正しい舌の位置・飲み込み方・呼吸法を再教育する方法です。
よく使われるMFTトレーニング例
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👅 舌を上あごにぴったりつける練習
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👄 唇を閉じる筋力を鍛えるストロー訓練
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🥤 舌を使わずに飲み込む練習
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🍬 ガムを左右均等に噛んで口腔バランスを整える
日々のトレーニングの積み重ねが、後戻りの防止や、表情・姿勢の改善にもつながります。
◆ リテーナー+筋機能のダブルケアが成功のカギ
後戻りを防ぐには、
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保定装置(リテーナー)での物理的な固定
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舌・口の筋肉を正しく使う意識と習慣
この**“2つのアプローチ”がセットで必要**です。
どちらか一方だけでは、後戻りのリスクは完全には防げません。
◆ マウスピース矯正でも後戻りは起こる?舌癖に要注意
「目立たない」「取り外せる」と人気のマウスピース矯正(インビザラインなど)ですが、実はこのタイプの矯正でも舌癖による後戻りは起こり得ます。
マウスピース矯正では、歯が透明なアライナーで少しずつ動いていきますが、矯正後の保定(リテーナー装着)と舌の使い方が非常に重要です。
特に、マウスピースは装着中こそ歯を覆って固定しますが、外した時間帯や就寝中に無意識の舌癖があると、歯に持続的な圧力がかかり、後戻りが起きやすくなります。
さらに、マウスピース矯正は「取り外せる=自己管理が必要」な治療です。
1日20時間以上の装着が推奨されていても、つい忘れたり、長時間外したりしていると、舌癖による影響を受けやすくなります。
📝 マウスピース矯正の後戻りを防ぐには?
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舌を上あごに置く習慣をつける(正しい舌ポジション)
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食事や会話中の舌の動きに注意する
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リテーナー装着を忘れずに継続する
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必要に応じてMFT(口腔筋機能療法)を受ける
マウスピース矯正も、見えない部分=舌や筋肉の使い方のケアがあってこそ成功すると言えます。
◆ まとめ|後戻りを防ぐのは「意識」と「習慣」
矯正はゴールではなく、「美しい歯並びをキープするためのスタート地点」です。
舌癖という小さなクセが、後戻りという大きな結果を引き起こすことも。
しかし、早く気づいて正しくケアをすれば、歯並びはしっかり守れます。
もし今、歯のズレや口のクセに心当たりがある方は、一度歯科医院に相談してみてください。
舌癖を正しく改善すれば、矯正の成果を一生モノにできるはずです。