- この記事の監修者
- 医療法人「建昇会」理事長。歯科医師。愛知学院大学歯学部卒業、日本成人矯正歯科学会会員、日本矯正歯科学会会員、UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校歯科矯正科修了。
下唇を噛む癖で歯並びが変わる?下顎前歯の傾き・唇の歯型との関係を解説
2026年09月25日
下唇を噛む癖、ありませんか?唇の「跡」は歯並びからのサインかもしれません
鏡を見たとき、下唇に歯の跡がついていることはありませんか?
「気づくと下唇を噛んでいる」
「下唇を内側に巻き込む癖がある」
「いつも同じところに歯の跡がついている」
このような癖は、本人が気づかないまま続いていることがあります。
下唇を噛む・前歯の間に下唇を入れるといった動作は、「口腔習癖(こうくうしゅうへき)」と呼ばれるお口周りの癖のひとつです。
一時的に下唇を噛んだからといって、すぐに歯並びが変わるわけではありません。
しかし、毎日のように繰り返し同じ方向から歯に力が加わっている場合には、歯の傾きや噛み合わせに影響する要因のひとつになることがあります。
特に注目したいのが、下顎の前歯です。
下唇を内側に巻き込むように噛む癖が続くと、下の前歯には内側、つまり舌側へ向かう力が加わります。
その状態が長期間続くことで、下顎前歯が舌側へ傾斜する要因のひとつになることがあります。
今回は、下唇に残る「歯の跡」をヒントに、下唇を噛む癖と歯並び、前歯の傾きとの関係について詳しく解説します。
下唇に「歯の跡」がついていませんか?
まずは鏡で、ご自身の下唇を確認してみてください。
次のような状態はありませんか?
・下唇の内側に前歯が当たったような跡がある
・下唇の同じ場所にいつもへこみがある
・横方向に線のような跡が残っている
・気づくと下唇を噛んでいる
・下唇を内側に巻き込むことが多い
・上の前歯の裏側に下唇が入っていることがある
もちろん、下唇に跡があるからといって、それだけで歯並びに問題があるとは判断できません。
食事中に一時的に噛んでしまった場合などにも、唇には跡が残ります。
注意したいのは、いつも同じ場所に歯の跡がついている場合です。
本人には噛んでいる自覚がなくても、仕事や勉強をしているとき、スマートフォンを見ているとき、緊張しているときなどに、無意識に下唇を噛んでいることがあります。
「自分は噛んでいないと思う」という方も、一度普段の口元を意識してみるとよいでしょう。
なぜ無意識に下唇を噛んでしまうの?
下唇を噛む原因はひとつではありません。
単純に昔から癖になっている場合もあれば、前歯の位置や口元の閉じにくさが関係していることもあります。
たとえば、上の前歯が前方に出ている場合、上下の唇を力を入れずに自然に閉じることが難しいケースがあります。
そのような状態では、口を閉じようとした際に、
下唇を上の前歯の内側へ巻き込む
という動作が起こりやすくなることがあります。
つまり、
上の前歯が前方にある
↓
口が自然に閉じにくい
↓
下唇を内側へ巻き込む
↓
上下の前歯の間に下唇が入り込む
↓
下唇に歯の跡がつく
ということも考えられます。
そのため、「下唇を噛む癖があるから歯並びが悪くなった」と一方向だけで考えるのではありません。
もともとの歯並びによって下唇を噛みやすくなり、その癖による力がさらに歯に加わっているというように、両方が関係している可能性があります。
下唇を噛むと下顎前歯が舌側に倒れることがある?
ここは、ぜひ知っていただきたいポイントです。
歯の位置は、舌・唇・頬などから受ける力のバランスとも関係しています。
歯の内側からは舌、外側からは唇や頬による力が加わっています。
通常はこれらの力のバランスの中で、歯の位置が保たれています。
ところが、下唇を内側に巻き込んで噛む癖があるとどうなるでしょうか。
下唇が下顎前歯に接触し、外側から内側へ押すような力が繰り返し加わることがあります。
つまり、
下唇を内側に巻き込む
↓
下唇が下の前歯を内側へ押す
↓
舌側へ向かう力が繰り返し加わる
↓
下顎前歯が舌側へ傾斜する要因になる
ということです。
一度噛んだ程度で歯が倒れるわけではありません。
しかし歯は、非常に強い力が一度加わることだけではなく、弱い力であっても持続的・反復的に加わる力の影響を受けることがあります。
そのため、毎日のように下唇を巻き込む状態が続いている場合には、矯正治療を考えるうえでも確認しておきたいポイントになります。
下の前歯が内側へ傾くと何が問題なの?
「少しくらい内側に傾いていても問題ないのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、下顎前歯の傾きは、単に下の歯だけの問題ではありません。
上下の前歯は、お互いの位置関係によって噛み合わせが成り立っています。
そのため下の前歯が舌側へ傾斜すると、上下前歯の前後的な位置関係や噛み合わせにも影響する可能性があります。
矯正治療では、歯を一列にきれいに並べるだけではなく、
「上の前歯をどの位置にするのか」
「下の前歯をどの角度にするのか」
「上下の前歯をどのように噛ませるのか」
といったことも考えて治療計画を立てます。
そのため、下顎前歯が内側へ傾いている場合には、なぜその位置・角度になっているのかまで考えることが重要です。
出っ歯と「下唇を噛む癖」は関係する?
上の前歯が前方へ突出している、いわゆる「出っ歯」の状態では、下唇が上下の前歯の間に入り込みやすくなる場合があります。
ここでも重要なのは、歯並びと唇の癖を別々に考えないことです。
たとえば、
上の前歯が前方へ出ている
↓
下唇が前歯の間に入りやすくなる
↓
下唇を噛む・巻き込むことが習慣になる
↓
上の前歯や下の前歯に通常とは異なる力が加わる
という状態になることがあります。
特に下唇が上下の前歯の間に入り込むような状態では、下顎前歯には舌側方向、上顎前歯には唇側方向への力が加わる可能性があります。
ただし、出っ歯の原因がすべて下唇の癖という意味ではありません。
歯の傾きだけではなく、上下の顎の骨格的な位置関係などが関係している場合もあります。
「下唇を噛む=必ず歯並びが悪くなる」ではありません
ここまで読むと、
「下唇を噛んでいたら、下の前歯が絶対に倒れてしまうの?」
と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
下唇を噛む癖があるからといって、必ず下顎前歯が舌側へ傾斜するわけではありません。
歯並びや噛み合わせには、
・顎の骨格
・歯の大きさ
・顎と歯の大きさのバランス
・もともとの前歯の傾き
・舌の位置や舌癖
・唇や頬から受ける力
・口呼吸
・遺伝的な要素
など、さまざまな要因が関係します。
大切なのは、「下唇を噛んでいるから悪い」と決めつけることではありません。
どのような力が、どの方向から、どのくらいの頻度で歯に加わっているのかを確認することが大切です。
マウスピース矯正中なら癖を気にしなくてもいい?
「マウスピースをつけて歯を動かしているなら、唇の癖は関係ないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、マウスピース矯正中であっても、普段のお口の癖を確認することは大切です。
マウスピースは治療計画に沿って歯へ力を加えますが、私たちの歯には日常生活の中でも舌・唇・頬などから力が加わっています。
そのため、マウスピースの装着時間を守ることはもちろん大切ですが、歯にどのような外的な力が加わっているのかも治療経過を見るうえで確認したいポイントです。
特に、
「マウスピースはきちんと使っているのに歯が計画通り動きにくい」
「前歯の動きが思ったようについてこない」
という場合には、装着時間だけで原因を判断するのではなく、歯の移動量やアライナーの適合、噛み合わせ、舌や唇の癖など、さまざまな要因を総合的に確認する必要があります。
矯正後の「後戻り」を考えるうえでも癖は重要
矯正治療で歯並びが整った後は、リテーナーと呼ばれる保定装置を使用して歯の位置を安定させていきます。
しかし、矯正治療前から歯に力を加えていた習慣がそのまま残っている場合、その力は治療後も続きます。
たとえば、下唇を噛むことで下顎前歯に内側への力が加わっていたのであれば、歯を動かした後にも同じ習慣が続いていないか確認することが大切です。
矯正治療では、
「歯をどこへ動かすか」だけではなく、「治療後、その位置でどう安定させるか」
という視点も非常に重要になります。
今すぐできる「下唇の癖」セルフチェック
一度、力を抜いた状態で鏡を見てみましょう。
次のようなサインはありませんか?
・下唇にいつも同じ歯の跡がある
・無意識に下唇を噛んでいる
・下唇を内側へ巻き込むことが多い
・上の前歯の裏に下唇が入ることがある
・口を閉じると顎先に力が入る
・スマートフォンを見ていると下唇を噛んでいる
・前歯が出ていて唇を閉じにくい
ひとつ当てはまったからといって、必ず歯並びに問題があるわけではありません。
ただし、いつも同じ場所に歯の跡がある場合や、長時間・頻繁に下唇を噛んでいる場合には、矯正相談の際に伝えてみてください。
癖だけでなく「なぜ噛んでしまうのか」を確認することが大切
下唇を噛んでいることに気づくと、
「今日から絶対に噛まないようにしよう!」
と思うかもしれません。
もちろん癖に気づくことは大切です。
しかし、無理に我慢するだけではなく、なぜ下唇を噛みやすい状態になっているのかを考える必要があります。
上の前歯の位置によって下唇が入り込みやすいのか。
口を閉じにくいために下唇を巻き込んでいるのか。
単純に長年の癖として残っているのか。
原因によって考え方は変わります。
そのため、歯並びだけを見るのではなく、唇や舌の使い方、噛み合わせなども含めて確認することが重要です。
まとめ|下唇の「歯の跡」は普段の癖に気づくヒントかもしれません
普段何気なく行っている「下唇を噛む」という動作。
本人にはほとんど自覚がなくても、毎日のように繰り返されていることがあります。
そして、下唇を内側に巻き込む癖によって下顎前歯に舌側方向への力が継続的に加わると、下顎前歯が舌側へ傾斜する要因のひとつになることがあります。
ただし、歯並びは唇の癖だけで決まるものではありません。
だからこそ、
「歯並び → 唇の癖」
だけではなく、
「唇の癖 → 歯に加わる力」
という両方の視点からお口を見ることが大切です。
矯正治療は、単に歯をきれいに一列に並べることだけが目的ではありません。
現在の歯並びや噛み合わせ、前歯の傾き、舌や唇の使い方などを確認し、一人ひとりに合わせた治療計画を立てることが重要です。
「下唇にいつも歯の跡がついている」
「気づくと下唇を噛んでいる」
「下の前歯が内側に倒れている気がする」
「前歯が出ていて口を閉じにくい」
そんな方は、矯正相談の際にぜひ一度お伝えください。
何気ない**下唇の「跡」**が、普段のお口の使い方や歯並びを考えるヒントになるかもしれません。
ご予約・ご相談はこちらから!
▶︎ [ご予約フォームリンク]
よくある質問(FAQ)
Q. 下唇に歯の跡があると歯並びが悪いということですか?
いいえ。歯の跡だけで歯並びに問題があるとは判断できません。一時的に唇を噛んだ場合にも跡はつきます。ただし、いつも同じ位置に跡がある場合には、下唇を噛む・巻き込む癖がないか確認してみるとよいでしょう。
Q. 下唇を噛むと下の前歯が内側に倒れますか?
下唇を内側へ巻き込む癖が続くと、下顎前歯に舌側へ向かう力が加わり、舌側傾斜の要因のひとつになることがあります。ただし、歯の傾きには骨格や舌、唇、歯の位置などさまざまな要因が関係するため、下唇を噛むだけで必ず傾斜するわけではありません。
Q. 下唇を噛む癖をやめれば歯並びは元に戻りますか?
癖を改善しただけで、すでに傾斜・移動している歯が自然に理想的な位置まで戻るとは限りません。現在の歯の位置や噛み合わせを確認し、必要に応じて矯正治療などを検討します。
Q. マウスピース矯正中も下唇を噛む癖に注意した方がいいですか?
マウスピース矯正中であっても、舌や唇などから歯へ加わる力を確認することは大切です。マウスピースの装着時間だけではなく、お口周りの癖なども含めて治療経過を確認していきます。
Q. 自分が下唇を噛んでいるかわかりません。
仕事中やスマートフォンを見ているときなど、何かに集中しているときの口元を意識してみてください。また、下唇の同じ場所に繰り返し歯の跡がついていないか確認することも、癖に気づくきっかけになります。







0120-78-1313

